恵々日々

文であること。

『青春アレルギー』 10/22


発症したのに気付いたのは、大量の高校生たちが音楽に合わせて踊り狂うYouTubeの広告が流れた瞬間だと記憶している。
最初は何が起こったのかが全く分からなかった。確かに登録者数そこそこのYouTuber達が終始へらへらしている動画をクリックしたはずで、そののちに自分もへらへらしようとしていたのに。


私のフライングへらへらはアップテンポの音楽と満面の笑みを浮かべた高校生たちによってかき消された。これほどに長い5秒間はないだろう、広告社会に賛同的な私だがこのときばかりは残酷なスキップ機能を恨んだ。

 

そこから明確に「青春」と銘打つものから匂わせるもの、最近では全く関係ないコンテンツのその裏に隠された青春を感じ取り勝手に苦しくなることが増えた。


一番酷かったのは「水色」だ。何なんだあれは。明度の低い淡ぁい(あわぁい)紫色に薄ぅい(うすぅい)緑色を混ぜたような人生を送ってきている私には眩しすぎた。コンビニで手を伸ばしたほうじ茶の下に陳列されたアクエリアスを見ただけで心がきゅっと締め付けられる。

 

「体育祭、ホントかったるいね」
「な。暑いし」
「ねー...それ、一口ちょうだいよ」
「はあ?ヤーだよお前も配られてるじゃん」
「いいじゃん飲みたいの」

 

勢いのままひと夏で死んでしまえばいいのに。
「体育祭、かったるいね」に使う酸素は文系ガリガリ色白運動音痴の為に残しておけ。どうせお前たちは精一杯走るんだから。
勝手に名付けた病名が「嫉妬」だと気づく頃には、私にも配られたアクエリアスは半分以上残して温くなっていた。